息子が3歳になった年の春、私は初めて「療育」に本格的に向き合うことになりました。
それまでの道のりは、悩みながらも、小さな決断を重ねた毎日。今こうして振り返ってみると、あのとき一歩踏み出して本当によかったなと思います。
最初の気づきは小児科の先生の指摘
息子は3月生まれ。まわりの子と比べると、月齢的に成長が遅れているのが当然なので、できないことが多くてもあまり気にしていませんでした。2歳近くなっても歩き始めず少し心配ではありましたが、「まぁ遅い子は遅いしな」と変な楽観主義が出ていました。
小児科の先生から、療育センターでの発達検査を勧められたのは、ちょうどその頃。「歩いていないのも気になるけど、言葉が出ていないのが気になるね」と指摘を受けました。私は、「え?言葉も?個人差の範囲じゃないの・・?」とまだ状況がよく理解できていませんでいた。
「療育」という言葉。少し前に、SNS上の育児漫画で初めて知りました。この言葉を聞いた時、「もしかして息子に何か障害があるのかも・・」とショックを受けたのを覚えています。
検査の結果は、運動と言葉の発達が約1年ほどの遅れ。とはいえ、特に診断名がついたわけでもなく、療育センターでの診察も「半年に1回、様子を見ましょう」というスタンス。
このときの私は、「1年っていっても、そのうち追いつくかな」と、そこまで深刻には考えていませんでした。もしかしたら、ショックの裏返しで、現実を正面から受け止めることができていなかったのかもしれません。
「逆さバイバイ」にハッとした瞬間
そんな気持ちが確実に変化したのは、ある日息子がした「逆さバイバイ」を見たときでした。自閉スペクトラム症(ASD)の特性の一つとされていることを知っていたので、「これは本当になんとかしないといけない」と、初めて本気で思いました。
さらに、階段の上り下りができないのに、ひらがな・カタカナ・簡単な漢字まで読めるなど、得意と苦手の差がどんどん開いていく感覚もありました。
決断から、驚くほどスムーズに進んだ療育への一歩
基本的に楽観的ではありますが、一度本気になると、行動のスピードは早いと自負しています。
自治体のHPで手順を調べ、療育の施設を紹介しているHPから候補をピックアップ。「診断も出ていないし、通えるのかな?」と不安になりながらも、小児科の先生に相談し、意見書を書いてもらうことに。
そこからは驚くほどスムーズでした。
空きのある施設の見学 → 受給者証の申請 → 利用開始までがスピーディーに完了。
療育センターの先生にも「通えるならぜひ」と背中を押してくださり、「1年の遅れって、療育を利用するのに全然おかしくないことなんだ」と、現実をようやく理解できた気がします。
そして、3歳からの療育スタート!
息子が3歳になってすぐ、週1回の療育通いが始まりました。息子は幼稚園を2年保育にしたため、年少にあたる一年間は、療育に専念する年となりました。
ちょっとした不安もありましたが、通い始めてすぐに息子はその場に馴染み、楽しそうに通うように。
私も「この子の発達に、親以外の大人がしっかり関わってくれることが、こんなにも心強いんだ」と実感しました。
両親が遠方で頼れない中、夫婦で頑張ってきた3年間。やっと「誰かに頼ってもいいんだ」と、心がふっと軽くなりました。
療育に対する世間の温度差も感じた
療育に通うことを先輩ママに話したとき、「それって、ママの意思なの?」と聞かれて戸惑ったことがありました。
どうやら、世間ではまだ「療育に通わされる」と感じる人も多いようです。SNSでも「カミングアウト」という言葉を目にすることがあり、保育園や幼稚園で指摘されても療育を避ける家庭もあるようです。
これに関しては、本当に難しいと思います。私は「逆さバイバイ」で完全にスイッチが入り、「息子にとっていい環境を第一に」と考えられるようになりましたが、受け入れられない親御さんの気持ちもとてもよく分かります。
私の幼少期を思い出して
私自身も、幼いころに「場面緘黙」のような状態でした。家庭では話せるのに、幼稚園ではほとんど話さない。でも、大人になって環境に恵まれ、今はそこそこ自己肯定感もあります。
もしあの頃、今のように「療育」という選択肢があったら、もっと楽に過ごせたのかもしれない・・・そういった気持ちがあるからこそ、療育の世界にすんなり入っていけたのかもしれません。
参考記事はこちら↓

息子を「知る」ための時間に
3歳1ヶ月のとき、2回目の発達検査を受けた息子。結果は、運動能力が1歳8ヶ月程度、言語と認知能力は半年ほどの遅れ。
このとき初めて「発達障害の傾向があります」「療育は必要です」と言われました。でも私の中には「やっぱりそうか」という気持ちが強く、ショックは少なかったです。
むしろ、逆さバイバイを見たときの「母親としての直感が間違っていなかったんだ」と、不思議な納得感がありました。
この結果を受けて、療育は週2回に。より手厚いサポートを受けられることになりました。
その後は療育センターのグループ療育・OT、民間の運動療育にも通うようになり、小学校入学までしかりとサポートしていただきました。その甲斐あってか4回目の発達検査では言語も認知能力も実年齢以上の結果に。最終的に遅れがあるのは運動能力だけになっていました。(もちろん各項目の平均値であって、中身は凸凹だらけです💦)
最後に
改めて振り返ると、「療育に通う」と決めて動き出したあの一歩が、息子の成長の大きな転機になったと感じています。
療育は、特別なものではなく「その子を知るための時間」であり、「その子にとって安心できる環境」を整える第一歩でした。
当時の私と同じように、迷いながらも子どもに向き合っている方へ。「あの一歩が、すべての始まりになるかもしれない」——そんな想いが、少しでも伝わればうれしいです。
コメント